合同会社について

合同会社について

経営管理ビザだと、株式会社と合同会社のどっちがいい?

経営管理ビザのご相談で、ビジネスを始めるときの会社は株式会社(かぶしきかいしゃ)がいいのか、合同会社(ごうどうかいしゃ)がいいのか、といったご質問をいただくことが増えてきました。結論から申し上げますと、経営管理ビザの取得では、合同会社と株式会社のどちらでも問題ありません。

ビジネスでの合同会社

経営管理ビザの取得・変更では、ビジネスが在留資格の要件(事務所や500万円以上の資本金または2人以上の社員など)を満たしていれば、合同会社でも株式会社でもビザを申請することができます。

 

大切なのは、始めようとしているビジネスにあった会社の形を選ぶことです。そこで合同会社の特徴を株式会社と比較しながらお伝えします。

 


 

  • 合同会社は、シンプル&ローコスト

株式会社に比べ、合同会社はとにかくシンプルな手続きと組織でビジネスを始められるようになっています。出資をする人が経営者になるので、株主総会や取締役などは必要ありません。また会社を作るための費用も株式会社に比べて安く済みます。

 

資本金500万円の会社を設立する場合、合同会社は株式会社よりも14万円も設立費用が安く済みます。

法定費用 合同会社 株式会社
定款(ていかん)の収入印紙 40,000円 40,000円
定款の認証(にんしょう)手数料 0円 50,000円
定款の謄本(とうほん)手数料 0円 2,000円
登録免許税(とうろくめんきょぜい) 60,000円 150,000円
合計 100,000円 242,000円
  • 定款(ていかん):会社の一番重要な規則を定めた書類です。必ず作成します。
  • 定款の認証(にんしょう):公証役場で、公証人に、定款を確認してもらうことです。
  • 定款の謄本(とうほん):公証人に確認してもらった定款の写しです。
  • 登録免許税(とうろくめんきょぜい):法務局に会社を登録する費用です。

合同会社では、定款を認証してもらう必要がありません。なので手続きも簡単になり、設立の費用も安くなります。

 

  • 合同会社は、素早く自由な意思決定ができます。

合同会社は、出資者と経営者が同じ人なので、経営判断が素早く行えます。また利益の配分も自由に取り決めることができます。株式会社では、取締役会や場合によっては株主総会での決定が必要になります。

 

  • 合同会社は小さな会社で、株式会社は大きな会社 ではありません。

合同会社は、小さなビジネスを始めるときに向いていますが、大きなビジネスでも合同会社の形をえらぶ企業が増えています。日本のAppleやGoogle、スーパーの西友などの大きな売上高の会社も合同会社です。会社の規模(資本金や売上高)は、合同会社・株式会社には関係がありません。

 

合同会社の注意点

合同会社にはいろいろと株式会社にはないメリットがありましたが、注意する点もあります。

  • だれが”ボス”なのかをはっきりさせましょう。

合同会社は、出資をした人の全員が経営者になります。注意する点は株式会社と違って、”出資した額の割合は会社の意思決定に関係がない”ということです。

 

例えば資本金500万円の会社をAさんが450万円(90%)、Bさんが50万円(10%)で出資した場合、株式会社では当然Aさんの意思が経営方針となります。しかし合同会社では、AさんもBさんも1対1の対等の立場になってしまいます。合同会社では意思決定を多数決で行うことになるので、もしBさんが反対の意見を言ったら、Aさんは90%も出資しているのに、自分の意思で経営ができなくなる可能性があります。

 

このようなことにならないよう合同会社を作る場合には、下記のような対策も必要です。

  • 1 出資者=経営者は、自分ひとりにする
  • 2 出資者が複数人いても、経営できる人(業務執行社員=ぎょうむしっこうしゃいん)を定款で自分ひとりにする

この他にも対応策はありますが、大切なことは合同会社のメリットである意思決定の速さや経営の自由さを失くさないよう、あなたのビジネスではだれがボスなのかをはっきりとさせることです。

 

  • 合同会社だと、信用力が落ちる?

”信用力”とは、簡単に言ってしまえば、金融機関からお金を借りられるかどうかです。確かに株式会社の方が、意思決定に複数のチェックが入るのでお金を借りやすいかもしれません。しかし、株式会社だろうが合同会社であろうが、スタートしたばかりのビジネスで信用がないのは同じことです。結局はビジネスの実績を信用してもらえるか(お金を返してもらえると金融機関から思われるか)どうかです。

 

実績はビジネスを続けることでしか手に入りません。合同会社でも株式会社でも実績を作ることが重要です。将来ビジネスが安定したら、状況に合わせて合同会社から株式会社へ組織変更することも可能です。

合同会社の設立の手順

合同会社を設立する手順は下記の1から3ですが、その後の経営管理ビザの取得・変更もあわせてご案内します。

 

会社の定款(ていかん)を作成する

定款には、必ず下記の事項を記載します。

  • 商号(会社の名前)
  • 会社の事業目的(ビジネスの内容です)
  • 会社本店の所在地住所(事務所の場所です)
  • 社員(出資者)の氏名や名称と住所
  • 社員の会社債務への責任について(間接有限責任=出資した金額だけ責任を持つ)
  • 社員の出資金や現物出資の内容

※社員とは、従業員のことではありません。出資をして経営をする人のことです。

 

※事業目的は正しく記載して下さい。この後に必要なビザの申請とも関連します。事業目的は複数記載できますので、今からするビジネスだけではなく、将来に行う可能性がある事業も記載したほうが効率的です。

 

下記は、”会社のルールとして定める場合には、定款に記載しないと無効になる”項目です。

  • 業務を実際に行う社員(業務執行社員)について
  • 代表社員(業務執行社員が複数いる場合)について
  • 会社の利益の配当に関する事項(出資金額にかかわらず自由に決められます)
  • 社員の退社(出資者をやめること)に関すること(出資金額の払い戻しに関するルール)
  • 持分の相続に関する定め(社員死亡時に会社がその人の持ち分を買い取ることができるなど)
  • 会社を解散する場合の理由(特定の条件を達成したときに解散すると、決めておくこともできます)
  • 会社の存続期間(ビジネスを続ける期間を決めておくこともできます)
  • 残った会社財産の分配割合(解散した時に残った会社財産を誰にいくら分配するか)

上記の他に、”定款に書いても書かなくてもいい”項目もあります。定款は一度作成すると社員全員の賛成がないと変更することはできません。なので会社独自のルールを定款に書いておけば、強い決まりとなって会社を守ることができます。

 

合同会社の定款の変更は、社員全員の賛成が必要です。内容をよく検討して作成してください。

 

資本金を指定口座に入金する

経営管理ビザの取得・変更では、会社の資本金として500万円以上が求められます。社員になる人が指定の口座に振り込んで、その銀行から証明を受けます。社員が1名の場合は、振り込みをせず、その人の通帳で預金を確認します。

 

この500万円の資本金は、経営管理ビザの申請で求められる独特の要件です。500万円の資本金にかえて、常勤の職員を2名以上雇用することでも、この資本金の要件を満たすことになります。

 

法務局で法人の設立登記を行う

最後に、設立する住所を管轄する法務局で”会社設立登記”を行います。この手続きは、原則として設立する会社の代表者が行います。ちなみに会社の設立の日は、登記が完了した日ではなく”登記を申請した日”になります。記念日や特別な日と一緒にしたいのであれば、申請する日をご注意ください。

 

 

会社の設立(法人登記)が済んだ後には、次の4から7の手続きを行います。

法務局で会社の印鑑を登録し、印鑑カードの交付を受ける

個人の印鑑を役所へ登録するように、会社の印鑑も法務局へ登録します。日本の契約では登録した印鑑による契約書への押印と、その印鑑を公的に証明する”印鑑証明書”の提出が求められます。その印鑑証明書を簡単に法務局から発行してもらうのに、”印鑑カード”が必要になります。

 

税務署へ給与支払い事務所等の開設届出書を提出する

「給与支払い事務所等の開設届出書」の提出は、雇用することになってから1カ月以内に行います。「法人設立届出書」も2ヶ月以内に提出が必要です。この他にも税金関係では、都道府県、市区町村への届け出も必要です。

 

(ビジネスに許認可が必要な場合は)許可や免許を申請します

ビジネスを管轄する役所で許認可の取得手続きを行います。飲食店なら保健所で”飲食店営業許可”、不動産業なら都道府県知事から宅建業の免許、リサイクルショップなら扱う品物に応じた古物商許可を警察署から取得する必要があります。

 

 

 

以上の1から7の手続きで、経営管理ビザの取得・変更に必要な会社の書類がそろうことになります。変更申請では審査に長く時間がかかるので、途中で現在のビザが切れたり、トラブルにならないようご注意ください。

 

社会保険と雇用保険への加入

株式会社や合同会社などの法人は、従業員の人数に関係なく、たとえ社長一人の会社であっても、社会保険(健康保険、厚生年金保険)への加入義務があります。雇用保険は、1名でも従業員を雇用する場合は(林業などごく一部の例外をのぞき)必ず加入しなければなりません。

2020年8月改訂のガイドラインにより、会社として社会保険・雇用保険への加入と、その保険料を適切に支払っていること、従業員(アルバイト含む)の労働条件が労働基準法に合致していることが、経営管理ビザを更新する際に審査される重要な項目と発表されています。

せっかく会社を設立して、経営管理ビザが1年後に更新不許可などといった結果にならないよう、法令上必要な社会保険、年金、雇用保険には必ず加入してください。

 

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