
2026年10月1日、永住許可に関するガイドラインが改定され、収入や年金などについて、これまでより具体的な考え方が示されました。
前回の記事では、「永住許可の要件が厳格化|2026年10月改定の新ガイドラインをわかりやすく解説」として、新しい永住許可ガイドラインの主な変更点と、それぞれの基準がいつから適用されるのかを解説しました。
しかし、新しいガイドラインを読んでも、「年収はいくらあればよいのか」「夫婦の収入は合算できるのか」「何年分の収入が必要なのか」「年金はいくら必要なのか」など、実際に永住許可申請を考えるうえでは、まだ分かりにくい点が数多く残っています。
そこでこの記事では、新しいガイドラインの中でも特に分かりにくい収入と年金の基準を中心に、実際の永住許可申請ではどのように考えていくことになるのか、一つずつ見ていきます。
なお、新しいガイドラインには、具体的な金額や計算方法まで明示されていない部分があります。この記事では、公表されているガイドラインの内容を基本とし、具体的な基準が示されていない部分については、現時点で考えられる実務上の考え方として解説します。
今回のガイドライン改定で、特に大きな変更の一つとなったのが、永住許可における収入の考え方です。
これまでの永住許可でも、将来にわたって安定した生活を続けられるだけの収入があるかどうかは重要な審査項目でした。しかし、新しいガイドラインでは、収入についてこれまでより具体的な考え方が示されています。
新しいガイドラインでは、申請時点において、申請者が属する世帯の年収が、「世帯人数に応じた日本人世帯の平均収入を上回る水準」に継続して達しているかどうかが、判断する際の一つの要素とされています。ここで重要なのは、すべての申請者に共通する「年収○○万円以上」という一律の金額が示されたわけではないことです。
一人暮らしの人と、配偶者や子どもを扶養している人とでは、生活に必要となる収入も異なります。そのため、新しいガイドラインでは、申請者本人の年収だけを見るのではなく、同じ家計で生活する世帯を一つの単位として、世帯人数と世帯収入の両方から判断するという考え方が明確にされています。
申請者が一人暮らしで、同じ家計で生活する家族がいない場合には、1人世帯として考えます。
つまり、単身者の場合には、申請者本人の年収について、日本人の1人世帯の平均収入を上回る水準に継続して達しているかどうかを見ていくことになります。
一方、結婚して配偶者と生活している場合や、子どもを扶養している場合には、単身者と同じ基準で考えるわけではありません。
たとえば、夫婦2人で生活している場合には2人世帯、夫婦と子ども2人で生活している場合には4人世帯というように、基本的にはその世帯人数に応じた日本人世帯の平均収入と比較して考えることになります。
さらに、扶養している家族が海外に住んでいる場合など、単純に「日本で同居している人数」だけでは判断できないケースもあります。この点については、次の章で詳しく見ていきます。
したがって、新しい収入基準について考えるときに、
「永住許可には年収がいくら必要なのか?」
という金額だけを先に探しても、自分に必要となる収入水準は分かりません。
まずは、自分の場合は何人世帯として考えるのか、そして誰の収入を世帯収入として考えることができるのかを確認することが重要になります。
新しいガイドラインでは、収入について申請者本人だけを見るのではなく、原則として同じ家計で生活する世帯を一つの単位として判断することが示されています。
そのため、結婚して夫婦で生活している場合には、必ずしも永住許可を申請する本人の収入だけで考えるわけではありません。
たとえば、夫婦がともに働いている場合には、一定の条件のもとで夫婦の収入を合算して考えることができます。また、夫婦の一方が働き、もう一方が専業主婦(主夫)として生活している場合には、収入のない配偶者についても、同じ家計で生活する世帯の一員として考えることになります。
ただし、ここで注意したいのは、「夫婦の収入を合算して必要な収入水準を上回っていれば、それだけでよい」という意味ではないことです。
また、収入の基準となる世帯人数についても、現在日本で一緒に暮らしている家族の人数だけを数えればよいとは限りません。
新しいガイドラインでは、申請者本人だけではなく、同一生計にある世帯の収入を合算して、世帯全体の収入を確認することとされています。
たとえば、夫婦がともに就労可能な在留資格で働いている場合には、申請者本人の収入だけではなく、配偶者の収入も含めた世帯収入で考えることができます。
また、夫が会社員として働き、妻が専業主婦であるような世帯で夫婦が永住許可を申請する場合に、妻自身に収入がないからといって、それだけで独立生計要件を満たさないということではありません。夫の収入によって夫婦の生活が安定して維持されているのであれば、その世帯全体の経済状況から考えることになります。
一方で、少し注意が必要なケースもあります。
たとえば、夫婦2人の世帯で夫だけが永住許可を申請し、世帯全体としては十分な収入があっても、その大部分を永住許可を申請しない妻の収入に依存しているようなケースです。
永住許可の独立生計要件では、世帯全体の収入だけではなく、申請者のこれまでの在留状況や現在の収入、将来見込まれる収入、資産、技能なども含めて、将来にわたって安定した生活を続けることができるかが判断されます。
そのため、世帯全体の年収が必要な水準に達しているからといって、申請者本人の収入がどの程度であっても問題ないとは限りません。
夫婦の収入を合算できる場合でも、「世帯全体でいくらの収入があるのか」と「永住許可を申請する本人がどのように安定した生計を維持しているのか」の両方を確認しておくことが大切です。
家族の収入であれば、すべて世帯収入に加えることができるわけではありません。
新しいガイドラインでは、「家族滞在」など就労を目的としない在留資格で在留し、資格外活動許可を受けて働いている人の収入については、世帯収入には加算しないことが示されています。
たとえば、「技術・人文知識・国際業務」で働く夫と、「家族滞在」で在留し、資格外活動許可の範囲でパートをしている妻の世帯であれば、妻のパート収入を夫の収入に加えて、世帯収入として考えることはできません。
したがって、夫婦共働きであっても、単純に2人の年収を足せばよいわけではなく、配偶者がどのような在留資格・就労状況で収入を得ているのかについても確認する必要があります。
もう一つ注意したいのが、収入水準を判断する際の世帯人数です。
新しいガイドラインでは、日本国内で同居している家族だけではなく、海外に住んでいる親族などであっても、申請者が扶養している場合には世帯人数に加えて考えることとされています。
そのため、申請者本人は日本で一人暮らしをしていても、海外に住む配偶者や子ども、親などを扶養している場合には、単純に「1人世帯」として収入水準を考えることはできません。
収入の基準を確認するときには、住民票上の世帯人数だけを見るのではなく、日本国外も含めて誰を扶養しているのかについて確認する必要があります。
また、世帯人数が5人以上となる場合には、増加する生活費なども考慮して収入水準を判断することが、新しいガイドラインで示されています。
このように、新しい収入基準では、単純に申請者本人の年収や住民票上の世帯人数だけを見るのではありません。
「誰と同じ家計で生活しているのか」「誰の収入を世帯収入として考えることができるのか」「誰を扶養しているのか」
まで確認したうえで、自分の世帯に必要となる収入水準を考える必要があります。
新しいガイドラインを見て、多くの方が最も気になるのは、「結局、年収はいくらあれば永住許可を申請できるのか」という点ではないでしょうか。
しかし、新しいガイドラインでも、「1人世帯なら年収○万円以上」「2人世帯なら○万円以上」といった具体的な金額は示されていません。
示されているのは、申請者が属する世帯の年収が、「世帯人数に応じた日本人世帯の平均収入を上回る水準」に継続して達しているかどうかを考慮する、という基準です。
そのため、これまでインターネットなどで見かけることのあった「永住許可は年収300万円程度が一つの目安」といった考え方を、そのまま新しいガイドラインに当てはめることはできません。
また、日本人世帯の平均収入を調べて、その金額を少し上回っていれば必ず基準を満たす、と考えるのも適切ではありません。
新しいガイドラインでは「日本人世帯の平均収入を上回る水準」とされていますが、現時点では、どの統計の、どの数値を使って具体的な収入水準を算出するのかまでは公表されていません。
また、「平均収入を1円でも上回ればよい」「平均収入の何%以上あればよい」といった具体的な計算方法も示されていません。
したがって、インターネットなどで日本人の平均年収を調べ、その数字をそのまま自分の永住許可の基準額と考えることはできません。
実際の申請では、世帯人数に応じた収入水準だけではなく、その収入が継続して得られているかどうかも重要になります。
新しいガイドラインが「継続して達しているか」としていることからも、申請直前の1年間だけ収入が高ければよいというものではありません。
では、ある程度高い収入があれば安心なのでしょうか。
この点についても、「年収500万円あれば大丈夫」「600万円あれば問題ない」といった一律の金額で考えることはできません。
必要となる収入水準は世帯人数によって異なりますし、前の章で見たように、扶養している家族がいれば、その人数も考慮する必要があります。
また、現時点で具体的な判定額は公表されていませんが、新しいガイドラインで示された考え方からすると、単身で扶養家族がいない場合であっても、年収500万円程度あれば当然に収入基準を満たす、と考えるのは慎重になった方がよいでしょう。
これは「年収500万円では永住許可が取れない」という意味ではありません。
永住許可は収入だけで決まるものではなく、また、具体的な収入基準も公表されていないためです。しかし、少なくとも従来言われてきた年収の目安だけを基準にして、「自分は十分な収入があるから大丈夫」と判断することは難しくなったと考えられます。
東京と地方では、家賃をはじめとする生活費に大きな違いがあります。そのため、「住んでいる地域によって必要となる年収も変わるのでは?」と思う方もいるかもしれません。
しかし、新しい収入基準は、居住する地域ごとに異なる収入水準を設定する仕組みとは考えられていません。
たとえば、東京に住んでいるから高い収入水準、地方に住んでいるから低い収入水準を適用する、という考え方ではなく、基本的には全国共通の収入水準として考えることになります。
したがって、新しい収入基準を確認するときには、「自分の地域では生活費が安いから、平均より低い収入でもよいだろう」と考えるのではなく、世帯人数に応じた収入水準を全国共通の基準として考えておくのがよいでしょう。
このように、新しいガイドラインによって収入の考え方は以前より具体的になりましたが、現時点では「○人世帯なら○万円」という基準表が公表されたわけではありません。
そのため、まずは自分の世帯人数や扶養関係を確認したうえで、日本人世帯の平均収入を上回る水準に、継続して達しているかという観点から見ていく必要があります。
新しいガイドラインでは、申請時点の世帯年収が必要な水準に達しているだけではなく、その収入を「継続して」得ているかどうかも確認することとされています。
では、実際には何年くらい必要な収入水準を維持していればよいのでしょうか。
この点については、すべての永住許可申請について「過去○年間」と一律に考えるのではなく、どのような要件によって永住許可を申請するのかによって、確認される期間が異なると考える必要があります。
一般的な就労資格から永住許可を申請する場合には、原則として10年以上日本に在留し、そのうち5年以上は就労資格または居住資格で在留していることが必要です。
この場合、収入についても、基本的には直近5年間に必要な収入水準を継続して満たしているかどうかを確認しておく必要があるでしょう。
また、高度人材として永住許可の在留期間に関する特例を受け、1年間の在留で永住許可を申請できるケースでは、直近1年間の収入状況を確認することになります。
ただし、これは「その期間さえ満たしていれば、それ以前の収入状況は一切見られない」という意味ではありません。永住許可では、これまでの在留状況なども含めて総合的に判断されます。
もう一つ注意したいのが、申請時点では必要な収入水準に達していないものの、これから収入が増えることが決まっている場合です。
たとえば、
「最近転職して年収が大きく上がった」
「来年度から昇給することが決まっている」
「新しい雇用契約では高い年収が予定されている」
といったケースです。
こうした将来の収入がまったく意味を持たないわけではありませんが、一般的な永住許可申請では、これから得られる予定の収入よりも、これまで実際に継続して得てきた収入を重視して考える必要があります。
そのため、現在の雇用契約上の年収が高くても、過去の収入が必要な水準に達していない場合に、将来の年収だけでその不足を補うことができるとは考えない方がよいでしょう。
収入については、課税証明書などによって、これまで実際に得てきた所得を確認できることが重要になります。
一方、高度人材として永住許可の特例を受けるケースでは、申請時点だけではなく、一定の時点における高度人材ポイントの計算なども関係するため、一般的な永住許可申請とは考え方が異なる場合があります。
したがって、一般的な永住許可申請では、
「これからいくら稼ぐ予定なのか」よりも、「これまで必要な収入を継続して得てきたか」
をまず確認することが重要です。
今回のガイドライン改定では、収入だけでなく、将来受け取ることができる年金についても、これまでより具体的な考え方が示されました。
これまでの永住許可申請でも、年金への加入や保険料を適切に納付しているかどうかは重要な審査項目でした。
新しいガイドラインでは、それに加えて、将来どの程度の年金を受け取ることができるのかという点についても確認することとされ、新たに「受給年金水準」という考え方が示されています。
つまり、これからは「年金保険料をきちんと払っているか」だけではなく、これまでの加入状況などから、将来どのくらいの年金を受け取ることができるのかについても確認する必要があります。
新しいガイドラインでは、申請者の年齢、これまでの年金加入歴、過去の職業、加入期間、平均的な収入、現在の年収などから将来の年金受給見込額を確認し、それを「受給年金水準」と比較する考え方が示されています。
では、その「受給年金水準」とは何でしょうか。
ガイドラインでは、日本人世帯の平均収入を上回る年収で30年間就労し、その期間、厚生年金に加入していた場合に見込まれる年金額を受給年金水準としています。
少し分かりにくい表現ですが、重要なのは、
「年金を何年間払ったか」だけで判断するわけではない
ということです。
厚生年金の場合には、加入していた期間だけでなく、その間の給与なども将来の年金額に影響します。
そのため、同じ30年間年金に加入していた人であっても、それまでの働き方や収入によって将来の年金見込額は異なります。
新しいガイドラインでは、こうした違いも含めて、将来受け取ることができると見込まれる年金額が一定の水準に達しているかを確認することになります。
では、自分が将来どのくらいの年金を受け取ることができるのかは、どのように確認すればよいのでしょうか。
確認する方法の一つが、日本年金機構の「ねんきんネット」です。
ねんきんネットでは、これまでの年金加入記録を確認できるほか、将来受け取ることができる年金の見込額を試算することができます。
「かんたん試算」だけでなく、今後の働き方や収入などの条件を設定して、より詳しく将来の年金見込額を試算することもできます。
そのため、これから永住許可申請を検討する場合には、まずねんきんネットなどを利用して、自分の年金加入記録と将来の年金見込額を確認しておくとよいでしょう。
ただし、ここで一つ問題があります。
自分の年金見込額を確認することはできても、
「その金額が永住許可で求められる受給年金水準に達しているのか」
を申請者自身が簡単に判断できる基準や一覧表は、現時点では示されていません。
では、実際に年金はいくらあればよいのでしょうか。
次に、この「受給年金水準」をもう少し具体的に見ていきます。
自分の年金見込額を確認できても、次に問題になるのが、「では、年金はいくらあれば永住許可の基準を満たすのか」という点です。
残念ながら、新しいガイドラインには、「年金の見込額が年額○万円以上であればよい」といった具体的な金額は示されていません。
また、申請者が自分の年金見込額と比較して、基準を満たしているかどうかを確認できる一覧表や計算式も、現時点では公表されていません。
そのため、ねんきんネットで自分の年金見込額を確認できたとしても、その金額だけを見て「永住許可の年金基準を満たしている」と判断することは難しいのが現状です。
前の章で見たように、新しいガイドラインでは、日本人世帯の平均収入を上回る年収で30年間就労し、その期間、厚生年金に加入していた場合に見込まれる年金額を「受給年金水準」としています。
この考え方を実際の年金額に置き換えてみると、基準を考えるための一つの参考にはなります。
たとえば、平均標準報酬額をおおむね年収500万円程度として、現在の厚生年金の計算方法を使って30年間の加入による報酬比例部分を単純計算すると、年額80万円程度になります。
ただし、この「約80万円」は、出入国在留管理庁が示した永住許可の基準額ではありません。
あくまで、ガイドラインに示された「一定の収入で30年間厚生年金に加入した場合」という考え方を、現在の年金制度に当てはめて試算した場合の参考額です。
また、実際に受け取る老齢年金には、厚生年金の報酬比例部分だけではなく、加入状況に応じた老齢基礎年金もあります。
したがって、
「年金見込額が80万円以上なら永住許可の基準を満たす」
あるいは逆に、
「80万円未満なら永住許可は認められない」
と判断することはできません。
もう一つ注意したいのは、「30年間」という数字です。
ガイドラインが30年間を示しているからといって、永住許可を申請するために30年間の厚生年金加入歴が必要になったわけではありません。
30年間という期間は、あくまで「受給年金水準」を考えるために示されたモデルです。
実際の審査では、申請者の年齢、これまでの年金加入歴、加入期間、過去や現在の収入などから、将来どの程度の年金を受給できると見込まれるのかを確認することになります。
たとえば、比較的若い年齢で永住許可を申請する人であれば、申請時点で30年間の厚生年金加入歴がないことは当然にあり得ます。
そのため、
「まだ厚生年金に30年間加入していないから永住申請できない」
と考える必要はありません。
重要なのは、30年間という加入年数そのものではなく、これまでの加入状況などから将来どの程度の年金を受け取ることができると見込まれるのかという点です。
そして、新しいガイドラインにはもう一つ重要な仕組みがあります。
将来の年金見込額が「受給年金水準」に達していない場合でも、一定の資産によってその不足を補うことができる場合があるという考え方です。
これが、新しいガイドラインで示された「補填資産」です。
次の章では、この補填資産について見ていきます。
将来受け取ることができる年金の見込額が「受給年金水準」に達していない場合、それだけで直ちに独立生計要件を満たさないと判断されるわけではありません。
新しいガイドラインでは、年金の見込額が受給年金水準を下回る場合でも、その不足を補うための十分な資産がある場合には、受給年金水準に達しているものとして評価することができるという考え方が示されています。
この不足を補うための資産が「補填資産」です。
つまり、将来の生活を年金収入だけで支えることが難しい場合でも、それを補うだけの資産があれば、その資産も含めて将来の生活を維持できるかどうかを判断するということです。
では、預貯金などの資産がいくらあれば、年金の不足を補うことができるのでしょうか。
この点については、現時点では具体的な金額や計算方法は示されていません。
たとえば、
「年金が年間10万円不足している場合には、預貯金が○万円必要」
「50歳なら○万円、60歳なら○万円必要」
といった具体的な基準表が公表されているわけではありません。
そのため、単純に預貯金の残高だけを見て、補填資産として十分かどうかを判断することは難しいのが現状です。
新しいガイドラインでは、補填資産を判断する際には、申請者の年齢も考慮することが示されています。
具体的には、年金を受け取る年齢に近い人と比較して、若い人については、今後働きながら資産を形成していくことができる期間が長いため、必要となる補填資産の水準も低く評価されることになるでしょう。
したがって、
「年金見込額が不足しているので、その不足分を現在の預貯金だけですべて補わなければならない」
と単純に考えるものではありません。
年齢やこれまでの年金加入状況、今後の就労によって形成できる資産なども含めて考えることになります。
ここは少し注意が必要です。
ガイドラインでは「十分な補填資産」がある場合には考慮するとされていますが、どのような資産を、どのような方法で評価するのかについて、具体的な基準がすべて示されているわけではありません。
そのため、「預金がある」「不動産を所有している」といった事実だけで、必ずその全額が補填資産として評価されると考えることはできません。
特に海外にある預貯金や不動産などについては、その存在やそこから得られる収入、そしてその収入に対する納税状況をどのように証明できるのかという問題もあります。
また、自宅として使用している不動産などは基本的に収益を出さないものです。そのような資産は、所有していることと、将来の生活費に充てることができることが必ずしも同じではありません。
したがって、補填資産については、
「資産がいくらあるか」だけではなく、「将来の年金収入の不足を実際に補うことのできる資産として評価されるか」
という視点で考える必要があります。
現時点では具体的な計算方法まで公表されていないため、年金見込額が受給年金水準に届かない場合には、年齢や年金加入状況、保有する資産などを個別に確認していくことになるでしょう。
ここまで見てきたように、新しい永住許可ガイドラインでは、収入や年金について、これまでより具体的な考え方が示されました。
「世帯人数に応じた日本人世帯の平均収入を上回る水準」という考え方が示され、さらに将来の年金についても「受給年金水準」という新しい基準が設けられています。
これだけを見ると、
「永住許可の条件が大幅に厳しくなったのでは?」
「これからは高い収入や多くの資産がなければ、永住許可を取れないのでは?」
と感じる方もいるかもしれません。
しかし、当事務所では、今回の改定を単純に「永住許可を取得すること自体が難しくなった」とは受け止めていません。
永住許可は、本来、日本で長期間にわたって安定した生活を続けてきた人に対して認められる在留資格です。
しかし、これまでの永住許可申請では、申請時点で必要とされる在留年数や年収など、表面上の条件を満たすことに重点を置いた申請も見られました。
今回の新しいガイドラインでは、単に申請時点で一定の年収があるかどうかだけではなく、必要な収入を継続して得てきたか、税金や社会保険料などの公的義務を継続して適切に履行してきたかといった、これまでの日本での在留状況をより重視する考え方が明確になったと、当事務所では受け止めています。
つまり、「申請するときだけ条件を満たせばよい」という考え方ではなく、日本でどのように生活し、働き、必要な義務を果たしてきたのかという継続した実績を見る方向が、より明確になったということです。
一方で、今回示された収入や年金の基準を見ると、決して低い水準とは言えません。
特に収入については、これまでインターネットなどで一つの目安として言われてきた金額だけを見て、「この年収なら大丈夫」と判断することは難しくなっています。
しかし、だからといって、一部の高所得者や多くの資産を持つ人でなければ永住許可を取得できない制度になったわけでもありません。
本来、永住許可を申請できる程度まで日本に長く在留し、その間継続して働いて収入を得て、税金や社会保険料などを適切に納めてきた人にとって、今回の改定によって突然、到底達成できないような条件が設けられたとまでは考える必要はないでしょう。
むしろ重要なのは、申請直前の年収だけを確認するのではなく、これまで日本で積み重ねてきた生活や就労、収入、納税、年金などの状況を一つずつ確認することです。
もちろん、長く日本に住んでいるというだけで永住許可が認められるわけではありません。
世帯人数や扶養関係によっては収入水準が問題になることもありますし、収入が一時的に大きく下がった時期がある場合、税金や社会保険料の納付に問題がある場合などには、慎重に確認する必要があります。
また、永住許可では、収入や年金以外にも、素行、日本語能力、日本の制度やルールへの理解など、さまざまな要素が確認されます。
したがって、新しいガイドラインについては、
「永住許可が一律に難しくなった」と考えるのではなく、「申請時点の条件だけではなく、これまで日本で安定した生活を継続してきた実績が、より重視されるようになった」
と考えると、今回の改定の意味を理解しやすいのではないでしょうか。
2026年10月に改定された永住許可ガイドラインでは、収入や年金について、これまでより具体的な考え方が示されました。
一方で、「年収○万円」「年金○万円」といった一律の基準が示されたわけではありません。
収入については、世帯人数や家族の収入、扶養関係、これまでの収入状況などを確認し、年金についても、加入状況や将来の受給見込額、必要に応じて補填資産まで含めて考える必要があります。
そのため、新しいガイドラインのもとで永住許可を検討するときには、一つの金額だけで判断するのではなく、自分の世帯やこれまでの在留状況に当てはめて確認していくことが重要です。
また、このガイドラインは公表されたばかりです。具体的な金額や計算方法が明らかになっていない部分もあり、今後、実際の審査を通じて運用上の実績や事例が蓄積されていくことになります。
当事務所でも、今後の運用状況を随時確認し、新たに分かったことがあればこの記事もアップデートしていきます。
新しい基準について、「自分の場合はどのように考えればよいのか分からない」という場合には、現在の在留状況や世帯収入、年金、納税状況などを確認したうえで、永住許可申請を検討することをおすすめします。
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