最近、「外国人観光客でも日本で運転免許が取れる!?」といった話題がSNSやニュースで取り上げられ、注目を集めています。中でも注目されたのは、住民票を持たない外国人が、ホテルや友人宅などを“住所”として申請し、一時滞在証明書をもとに運転免許を取得できてしまうというケースです。
このような話を聞くと、「そもそも、外国人が日本で“住所を持つ”ってどういうこと?」「どんな人が住民登録できるの?」という疑問が湧いてきますよね。今回は、そうした疑問にお答えしつつ、制度の背景について一緒に考えてみたいと思います。
日本で住民登録ができる外国人は、基本的に「3カ月以上の在留期間が許可されている人」です。行政的には「中長期在留者」と呼ばれ、これに該当する場合、在留カードが発行され、自治体で住所を登録し、住民票が作成されます。
逆に、在留カードを受け取ったあとに所定の期間内に住民登録をしなかったり、引っ越し後に転居届を出さなかったりすると、最悪の場合、在留資格の取消しにつながることもあるほど、住民登録は重要です。
なぜそこまで重要なのかというと、3カ月以上の在留者は日本の社会保障制度の対象となるからです。具体的には、健康保険や年金、各種行政サービスを利用できる一方で、保険料・年金・住民税などの負担も発生します。つまり、「地域社会の一員」として生活を共にする存在であるということですね。
短期滞在ビザ(観光目的など)では住民登録はできません。一方で、日本における在留資格のほとんどは「長期的かつ安定的な活動」を前提としているため、働くためのビザ、留学ビザ、家族と暮らすためのビザなどは、基本的に3カ月以上の在留期間が許可されます。
こうした制度があるからこそ、在留資格ごとに厳格な審査基準が設けられており、誰でも簡単に取得できるわけではありません。そこには、日本で生活することへの責任や社会的な役割を果たしてもらう、という考え方が根底にあるのです。
ここで少し目を向けたいのが、運転免許制度との関係です。実は、日本の運転免許制度は在留資格と明確にリンクしているわけではありません。でも、これまでは「日本で免許を持つのは、きちんと在留資格を持ち、住民登録をした人」というのが、暗黙の了解でした。
ところが、今回のように、観光ビザの人でも一時滞在証明書を使えば免許が取れる、というケースが広がると、その前提が崩れてしまいます。制度の趣旨から外れていても、完全に違法ではない――そんな“グレーゾーン”がもたらすのは、制度への不信感やグレーゾーンを利用する人達への嫌悪感です。
個人的な意見ですが、最近の外国人にまつわるネガティブな話題には、「制度の抜け穴を使って、うまくやろうとする姿勢」への違和感が背景にあるように思えます。
たとえば、「違法とは言えないけれど、そこまでやる?」というような行為。これまで常識やマナーで支えられていた社会の前提が崩れていく…。それに対して、多くの人が漠然とした不安や怒りを感じているのかもしれません。
日本には「すべてを法律で縛るのではなく、最後の手段として法を使う」という文化もありました。あまり評判はよろしくなかったかも知れませんが、“玉虫色”の決着や、空気を読む感覚の中で、社会がうまく回ってきた歴史もあります。
しかし今、そのバランスが揺らいでいるのかもしれません。法律を強化し、厳しく運用していこうという声も高まっています。
が、それはいつか、私たち自身の自由や柔軟さを縛ることにもなりかねません。
制度を守るということは、社会の信頼を守るということ。
そしてそれは、“ルール”以上に“マナー”をどう受け止めるか、という私たち一人ひとりの姿勢と、外国人との関わり方のバランスにもかかっているのかもしれません。
見えているのは制度の“抜け穴”か、それとも私たち自身の“無関心”か。
問われているのは、社会を形づくる私たちの意識そのものなのかもしれません。
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