会社の同僚や学校の同級生など外国籍の方が身近にいる人なら、「もうすぐビザが切れるから更新に行かなきゃ」、「就職するからビザを変更するんだ」といった会話を聞いたことがあると思います。そうでない人も「就労ビザを持たずに働いていた」などのフレーズをニュースや報道で耳にしたことがあるのではないでしょうか。
実はこの会話で出てくる「ビザ」は、本当は”ビザ(査証)”のことではなく、ビザとはまったく役割が違う「在留資格」のことを意味しています。
毎日の生活のなかでビザが在留資格だったり、その逆だったりするのは、どっちでもいい話です。しかしお役所の手続きではまったく別のもので申請する窓口さえも異なっています。手続きでこのことを知らなかったり誤解していたりすると、せっかく採用した外国人社員が働けなくなったり、日本に滞在できる期間が短くなったりする可能性さえあります。
では「在留資格」とは何なのか? そもそも「ビザ」って何なのか? このページではこのような疑問にお答えしながら、複雑な入管の手続きを少しでも分かりやすく解説していきます。
「在留資格」とは、大まかに分解して説明すると下記の内容になります。
そもそも本来は自分の国(日本人だったら日本、アメリカ人だったらアメリカ合衆国という意味)以外の外国には自由に入国したり住んだりすることは誰にもできません。
しかしそのままでは江戸時代の鎖国と同じです。そこで「どんな外国の人が、どんなことをするのか」という内容によって、自分たちの国に滞在することを許可してもいいでいよ、という仕組みが世界各国でつくられているのですが、この仕組みの日本版が「在留資格」という制度で活用されています。
「どんな外国の人が、どんなことをするのか」について日本では大まかに4つの分野があり、その分野に属する様々な在留資格が用意されています。(※2024年4月現在の在留資格は29種類もあります。)
このため日本国内にいる外国籍の人達には基本的に29種類の在留資格のなかから、どれか一つが許可されている事になります。
「専門的・技術的分野の在留資格」とも言われ、おもには日本国内で働く目的に対して発行されます。
「技術・人文知識・国際業務」や「経営・管理」などが代表的で19の種類があります。
「特定活動」という在留資格です。この在留資格は対象者や運用方法に予め幅を持たせてあることが特徴です。
おもに2種類があり、「法務大臣があらかじめ活動内容を告示しているもの」と「内容を告示していないもの」に分かれます。
在留資格は法律で定めらますが、これに対して「特定活動」の内容は法務大臣が指定できる事に特徴があります。つまり法律の改正を待てないような緊急的なことやフレキシブルな対応が求められるような場合にも活用できるように考えられているからです。
最近の例ではウクライナから避難されてきた方々にむけて就労可能な「特定活動(1年)」が発行されています。
ビザ(査証)は日本に入国を希望している外国籍の人について、「この人が日本に入国することに問題ないですよ」と空港などで入国審査をする担当者に推薦する効力をもった書類です。つまり日本に入国するための書類で、入国してからの日本での滞在中には基本的に効力がありません。このビザ(査証)は、多くの場合で日本大使館などの在外公館で申請してパスポートに貼られる形で発行してもらいます。
このビザ(査証)を発行される条件として、観光などの目的の「短期滞在」を除いて、ビザを申請する前に「在留資格」が許可されていることがほとんどの場合に必要です。
ちなみに日本語での正式名称が「査証(さしょう)」で、その英語名がVISAです。日本でもそのまま「VISA=ビザ」と呼ばれることの方が多いといえます。
日本政府が指定する国や地域の人達に対して、日本への渡航目的が観光、保養、スポーツ、親族の訪問など「短期滞在」の場合は査証(ビザ)取得をすることなく入国を認める措置です。
指定される国や地域ごとに滞在できる日数などが決められていて、働いたりすることはできません。
「ビザ」と「在留資格」の違いを説明してきましたが、実際の手続きのながれではどのように使い分けているのかを説明していきます。
手続きのながれ
→最も重要なポイントです。その外国人が日本でしたいことと、種類ごとに発行される条件を満たしていることを確認して申請します。申請は日本国内の入管で行いますので、当事務所のような行政書士や弁護士、または代理人でおこないます。
→在留資格が許可されると、在留資格認定証明書(COE=Certificate of Eligibilityの略)が日本で申請した人(行政書士や代理人)へ発行されます。その証明書を海外の申請者本人へ郵送します。
→在留資格認定証明書(COE)を受け取った申請者は日本大使館などでビザ(査証)の申請をおこなって発行してもらいます。
→ビザ(査証)が発行された後、ビザが貼ってあるパスポートと在留資格認定証明書を持って日本に入国します。
→3ヶ月以上の在留期間が許可されている場合は、在留カードという免許証のようなカードが在留資格に基づいて発行されることになります。このカードは日本に居る限りパスポートの代わりになるぐらいの重要な身分証明書の効力を持っています。
上記の手続きを含めて、査証(ビザ)と在留資格が関連する手続きを表にしてみます。
査証(ビザ) / 在留資格 | おもな手続き |
---|---|
査証(ビザ) | 在外公館での査証(ビザ)発給申請 |
在留資格 | 在留資格認定証明書交付申請(日本への来日) |
在留期間更新許可申請(有効期間の更新) | |
在留資格変更許可申請(在留資格の種類の変更) | |
永住許可申請 | |
再入国許可申請 | |
資格外活動許可申請(アルバイトなど) | |
就労資格証明書交付申請 |
ほとんどの手続きが「在留資格」に関するものです。「ビザが取れた」とか「ビザの期限が近付いたから更新する」とよく言われますが、実際には「ビザ」のことではなく「在留資格」のことで、「在留資格が認定された」「在留資格の期限が更新された」と言っていることになります。
当事務所はこの「在留資格の手続き」を専門に取り扱う申請取次行政書士事務所です。在留資格についてご相談やご質問があればお気軽にお問い合わせください。
ここまで「ビザ(査証)」と「在留資格」の違いについて簡単に解説させていただきました。
少々強引な例えかもしれませんが、ビザは日本というテーマパークへの入場券、そして在留資格はその中のアトラクション(働いたり留学したりすること)に参加できる資格だと考えてください。
インバウンドと呼ばれる観光客の人達は、日本というテーマパークに入場して景色を楽しんだりレストランの食事やお土産物を買うことはできますが、アトラクションには参加できません。
そして在留資格を持つ人でも、その在留資格の種類によって参加できるアトラクションに違いがあります。永住者だとほとんどのアトラクションに参加できますが、留学だと指定された学校で学ぶこと以外は決められた時間内のアルバイトなどの他は働いたりすることもできません。
一番重要なことは、日本という国にどのような理由や目的のために暮らしたいのかを考え、そして30種類近くある在留資格の中から適切なものを選んで申請することです。
とはいっても選ぶこと自体難しいうえに、それぞれの在留資格には許可されるための条件が別々に設定されています。そして手続きに提出する書類も種類が多く作成することも難しいといわれています。
しかしそのような手続きが難しいからとか面倒だからといった理由で本体の目的を諦めてしまうのは本末転倒です。
このようなビザや在留資格に関する手続きや相談事はご遠慮なく当事務所のような行政書士事務所へお尋ねください。なかでも行政書士浜岡事務所は在留資格に特化した専門の事務所です。
ちょっとした相談事から、一度は不許可になった件まで、個人や会社などの法人のご担当者様までお気軽にご連絡いただければ幸いです。