ビザ・在留資格は許可された後でも入管法で規定された「取消事由」に該当すると認定されてしまうと取り消されることになっています。
このページでは「どんな理由でビザ・在留資格が取り消しになるのか」を実際に起きた事例と一緒に解説して、そのようなことにならないよう注意喚起させていただきます。またもしもビザ・在留資格が取り消されてしまった場合、その後どのようになるのかも併せて解説いたします。
出入国管理及び難民認定法(いわゆる入管法です)では、ビザ・在留資格を取り消すことができる対象として、下記の10項目を定めています。これまでの傾向としては、下記の5と6に該当して在留資格が取り消しとなることが多いと言えます。
ここでは在留資格が取り消しとなる項目ごとに実際に起きた事例と一緒に解説いたします。
これはウソをついたり真実ではない書類などを使ってでビザ・在留資格が発行されたとしても、ウソなどが判明した場合には取り消されるという規定です。
過去に退去強制されたことがある人が、過去の手続きが他人名義だったので、今度は本人名義で「初めての来日」とウソの申請をして、COE(在留資格認定証明書)が許可され、入国時には外国人出入国記録カードに退去強制を受けたことがないとさらにウソの記入を行い上陸許可を受けたが、在留資格が取り消しになった。
氏名や生年月日を偽り「永住者」の在留資格を許可された人が、そのウソが判明し在留資格が取り消された。
これは日本で本当にしようとすることを隠して、ウソの活動目的に対応する在留資格が許可された場合には取り消されるという規定です。
日本で働く目的を隠して、在留資格を得るために日本人男性と偽装結婚した外国人女性に許可された、「日本人の配偶者等ビザ」が取り消された。
これは1と2に該当しないような場合でも、虚偽の書類の提出は在留資格を取り消すことになるという規定です。またその提出が故意(わざと行った)かどうかも問われません。
日本人配偶者と離婚した人が「自分の子供は日本人配偶者との間の子」で「自分は日本人の実子を育てている者」という2つのウソを記載した書類で「定住者」への在留資格変更が許可されたが、その後にこれらの書類内容が虚偽であることが判明し在留資格が取り消された。
当事務所の在留特別許可のページで在留特別許可の内容をご確認ください。
入管法別表第一の上覧の在留資格とは以下の通りです。
「外交」「公用」「教授」「芸術」「宗教」「報道」「高度専門職」「経営・管理」「法律・会計業務」「医療」「研究」「教育」「技術・人文知識・国際業務」「企業内転勤」「介護」「興行」「技能」「特定技能」「技能実習」「文化活動」「短期滞在」「留学」「研修」「家族滞在」「特定活動」
これは本来の在留資格で目的とされていることをせずに、他のことを行なっている、またはしようとしている場合には在留資格を取り消すという規定です。※在留資格の種類については「在留資格の種類と内容」のページをご参照ください。
これは5と違って、本来の在留資格の活動も3ヶ月以上していない場合(高度専門職ビザでは6カ月以上)には在留資格を取り消すという規定です。入管法別表第一の在留資格は上記の5の在留資格と同じです。
在留資格「技能実習」の人が実習先から失踪して、技能実習の在留資格に応じた活動を行うことなく3か月以上日本に在留していたことによって在留資格が取り消された。
これは日本人または永住者の配偶者の人を対象として婚姻状態が6ヶ月以上破綻している場合の規定です。
在留資格「日本人の配偶者等」の人が、日本人配偶者と離婚したあと6ヶ月以上日本に在留し、在留資格が取り消された。
中長期の在留者とは「短期滞在」を除く在留資格の保有者のことです。住居地の届出とはパスポート・在留カードを持参して住んでいる場所の区市役所・町村役場などで転入届を提出することです。在留カードが発行されていない場合は、パスポートを持参し転入届を提出します。この届出を90日以内に行わない場合には在留資格を取り消すという規定です。
これは日本国内で引越しをした場合には、新住所を90日以内に届けない場合には在留資格を取り消すという規定です。この手続きについては当事務所の外国人の引越しというページでも内容をご確認ください。
これはもしもウソの住所を届出した場合には、在留資格を取り消すという規定です。「正当な理由がある場合を除く」という追加の条件はありません。
もしも上記で説明した「在留資格を取り消す事由」に該当するのではないか、と思われるとその対象となった外国人に対して入国審査官か入国警備官による事実関係の調査が開始されます。
そしてこの調査を終えた後に下記の手続きが行われます。
この手続きは、在留資格の取り消しをしようとするときに入国審査官によって対象となった外国人から直接意見や事情を聴き取る手続きです。
この意見聴取で対象となった外国人は意見や事情を述べること、疑いを晴らすための証拠を提出できること、入国審査官側の資料を閲覧(調べながら読むこと)することができます。
ただし対象となった外国人が正当な理由なく意見聴取に応じない場合は、この意見聴取をすることなく在留資格の取り消しが行われることもあります。
入国審査官か入国警備官による事実関係の調査、そして入国審査官による意見聴取を経て「在留資格の取り消しが相当」と判断された場合に、在留資格が法務大臣によって取り消されることになります。
※反対に「取り消す理由がない」と判断された場合には、そのまま在留資格が維持されて在留を継続できることになります。
上記の手続きによって「在留資格の取り消し」が決定された場合には、その取り消しがどのような理由によるものだったのかによって下される措置が変わります。
この場合は「退去強制」の事由に当てはまるため、退去強制に関する手続きを経て送還される日まで、対象者は基本的に入国者収容所や地方入管局の収容場に「被収容者」として収容されることになります。
この場合にはあらたに最大30日間の期間がある(出国準備のための)特定活動という在留資格が与えられます。この在留資格で指定された期間内に対象者が自分で出国することになります。もしも「出国準備のための特定活動」で与えられた期間内に出国しなかった場合は不法残留者として「退去強制」の措置が取られることになります。
ここまでビザ・在留資格が取り消される規定と取り消された後の手続きについて解説してきました。ビザ・在留資格は外国人が日本で暮らすために必ず必要になる大事な資格です。取り消されるような事態に陥らないために、くれぐれも上記のようなことにご注意ください。
外国人が自分でウソをついたりして手に入れた在留資格が取り消されるのは当然ですが、しかし当事務所にご相談いただく内容では、取り消しになる規則を誤解していたり、必要な手続きを知らなくて行っていなかったなど原因でトラブルになっていることが多くなっています。たとえば留学生から就職して社会人になるようなときに過去のアルバイトなどついて慌てて相談をいただくようなこともあります。
特に下記のようなことについては、外国人本人以外にも(就労ビザの場合だと)会社の担当者の方も十分にお気を付けください。
外国人の住所が引越しなどで変更になった場合は、手続きをした区役所や市役所などで在留カードの裏側に新しい住所が記入されます。これは同じ自治体の中で引っ越した場合にも必ず必要な手続きです。土曜日曜など休日の窓口業務が自治体によって異なりますので、外国人が不慣れな場合は会社の担当者の方などのサポートが必要になります。
就業系のビザの場合、3ヶ月失業状態が続くと正当な理由がある場合を除いて在留資格の取り消し対象となってしまいます。外国人が自分から退職した、または残念ながら会社そのものが倒産などで職場がなくなってしまったなど失業状態になる理由は様々ですが、そのような場合は必ず管轄のハローワークにいって求職の為の登録を行ってください。この求職活動も「正当な理由」として扱われます。
この他にも手続きやビザに関することで迷ったり疑問に思ったりすることがあれば、当事務所にお気軽にご相談ください。